成人肺炎診療ガイドライン2017まとめ

肺炎は日本における死因の第3位の疾患であり高頻度に遭遇する疾患の一つです。今年は成人肺炎診療ガイドライン2017が新たに出たので、新ガイドラインについて解説します。日経メディカルの記事が参考になります。

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肺炎の分類

肺炎診療ガイドラインの説明をする前に肺炎の分類です。肺炎は以下の3つに分類されます。
①市中肺炎(community-acquired pneumonia:CAP)
 病院外で日常生活を送っている人に発症した肺炎。
②医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)
 以下の4つの条件のいずれかを満たす肺炎。・長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している
・90日以内に病院を退院した
・介護を必要とする高齢者、身体障害者
・通院で血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制剤など)を受けている
③院内肺炎(hospital-acquired pneumonia:HAP)
 入院後48時間以降に発症した肺炎。

これまでの成人肺炎診療ガイドラインと新ガイドライン

これまでは市中肺炎(CAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)、院内肺炎(HAP)のそれぞれで重症度分類や治療方針などのガイドラインが作成されていました。新ガイドラインではこれら3つのガイドラインが統合されて一つのアルゴリズムとして表示されるため、非常にわかりやすくなりました。そして、新ガイドラインの最大の変更点は終末期患者における対応が明記された点です。誤嚥性肺炎を繰り返す状態や老衰などの場合には、状態に応じて緩和ケアも選択肢の一つとなることがガイドラインに明記されました。
以前は田舎の病院に勤務していたので、肺炎を繰り返す高齢者の方や肺炎が原因で亡くなる方を何人も見てきました。その度に積極的な治療は本当に必要だろうか、と感じる日々でした。今回の改定をきっかけに治療をしないという選択肢がガイドラインで認められたことは大きな一歩のように思います。もしかすると今後肺炎患者に対する緩和ケアのガイドラインも出るかもしれません。

市中肺炎(CAP)の場合

市中肺炎(CAP)の場合にはまず敗血症の有無と重症度判定を行うと記載されています。敗血症の有無に関しては、基本的にsepsis-3に記載されているquick SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)で判断することになります。一方で重症度分類に関してはA-DROPを使用します。それぞれについて解説します。
〈quick SOFA〉
2016年2月にJAMAで発表されたSepsis-3のガイドラインで初めて提唱された概念です。以下の3つの項目のうち2つ以上が当てはまれば敗血症の可能性ありとなります。
・呼吸回数≧22回/分
・意識障害
・収縮期血圧≦100mmHg
〈A-DROP〉
A-DROPは日本呼吸器学会で推奨された市中肺炎(CAP)と医療・介護関連肺炎(NHCAP)の重症度判定と治療方針決定の指標の一つで、日本独自のものです。以下の5項目の頭文字を取ってA-DROPとしており、それぞれが1点で計5点満点で判断します。点数に従い外来治療が可能かどうか、入院治療が必要か、ICU入室を考慮するべきかが判断可能なツールで、特に救急外来では有用です。
・A(Age:年齢):男性70歳以上、女性75歳以上
・D(Dehydration:脱水):BUN≧21mg/dL
・R(Respiration:呼吸):SpO2≦90%もしくはPaO2≦60Torr
・O(Orientation:意識):意識障害あり
・P(Pressure:血圧):収縮期血圧≦90mmHg
 
0点→軽症(=外来で治療可能)
1点 or 2点→中等症(=外来もしくは入院で治療)
3点→重症(=入院加療)
4点 or 5点→最重症(=ICU入室を考慮) 
市中肺炎の場合には以上のようにquick SOFAとA-DROPを覚えておけば多くの場合で対応可能です(どの抗菌薬を使用するかは話が別ですが、、)。コンサルトの際には「A-DROP 3点で入院適応と考えます。」と言えればいいですね。

医療・介護関連肺炎(NHCAP)、院内肺炎(HAP)の場合

 医療・介護関連肺炎(NHCAP)の場合には前回説明したA-DROPを、院内肺炎(HAP)の場合には次に説明するI-ROADを使用します。これらとquick SOFAによる敗血症の有無、耐性菌のリスクを加味して治療方針を決定していきます。
 
〈I-ROAD〉
I-ROADは日本呼吸器学会で推奨されている院内肺炎(HAP)の重症度判定の指標の一つで、A-DROPと同様にそれぞれの頭文字を取ってI-ROADとしています。
・I(Immunodificiency:免疫不全):悪性腫瘍や免疫不全状態
・R(Respiration:呼吸):SpO2>90%を維持するためにFiO2 35%が必要
・O(Orientation:意識):意識障害あり
・A(Age:年齢):男性70歳以上、女性75歳以上
・D(Dehydration:脱水):乏尿もしくは脱水
 
以上5項目で3項目以上当てはまれば重症
2項目以下の場合には以下の該当項目があれば中等症、なければ軽症
・CRP≧20mg/dL
・胸部X線写真で陰影の広がりが一側肺の2/3以上
 

最後に

今も外勤で肺炎の患者を診ることがよくあります。非専門医にとってはこのガイドラインに則った対応が基本になるので、このアルゴリズムはしっかり頭に入れておきたいと思います。以上、成人肺炎診療ガイドライン2017についての解説でした。
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自由に生きる小児外科医

自由に生きる小児外科医

関西で生まれ育ち、都内で小児外科医として働いています。手術が必要な子どもたちの手助けになるように奮闘中。ブログを通して患者さんや医療者に正確な医療情報を発信していきます。 趣味は飛行機で日本各地、世界各国を旅行すること。ついにJALマイルを貯めてJGCを取得しました。ANAのSFC取得も検討中。旅行やマイルの貯め方についても書いていきます。
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