【コラム】新専門医制度開始について思うこと

8月2日の塩崎恭久前厚生労働大臣の談話、8月4日の日本専門医機構からの新たな専門医制度の開始に向けた声明が発表されたことで2018年4月からの新専門医制度の開始はほぼ確実となりました。各方面から反対意見が出ていたことは重々承知なので、今後の動向にも注意したいです。今日はそんな新専門医制度について私見を書いていきます。

現行の専門医制度と新専門医制度設立の経緯
現在の日本の専門医養成方法は各学会に委ねられています。まずは、日本の医師国家試験を合格後に2年間の初期臨床研修を受けます。初期臨床研修を修了した段階で専門研修(いわゆる後期研修)に移ることが一般的で、この専門研修を3~4年受けることによって専門医取得が可能になる場合が多いです。たとえば、外科専門医取得のためには日本外科学会が定める手術件数などの要件を満たし、専門医試験に合格(多くは医師6年目)することで専門医としての資格を得ることができます。他の診療科でも概ね同じような方法が取られているはずであり、専門医取得は多くが医師6~7年目になります。
それでは、この制度の何がいけないのでしょうか?各診療科で専門医を認定しているために多くの専門医制度が乱立しており、国全体として統一した制度がないことが問題視されています(欧米では専門研修制度が確立されています)。そこで、日本国内で専門医の最低限の質を担保するために日本専門医機構を作り、専門医を一括して管理しようというのが新専門医制度設立の経緯になります。

新専門医制度になぜ反対意見が多いのか?
個人的には日本の専門医の質を保つために欧米にならって新専門医制度を開始することは賛成です。実際のところは多くの外科系の診療科はもともと新専門医制度に似たようなやり方でやってきているため、そこまで大きな影響はないでしょう。一方内科では、初期臨床研修が終了した時点で専門診療科を決めることができずに、さらに専門研修で各内科をローテーションをすることになります。これは知識的な面や体力的な面で大変負担ですし、内科離れが進む可能性は十分に考えられます(後述)。
新専門医制度に反対意見が出ている最たる理由は地域医療崩壊とともに語られているためではないでしょうか?自分自身はこの3月まで田舎の病院に勤務していたので感じていたことではありますが、現行で言われている新専門医制度を開始すれば地域医療の崩壊は避けられないと思います(田舎の病院に残りたくても残れない制度だから)。新専門医制度開始うんぬんよりも地域医療崩壊への対策についてはしっかりやり方を整えていくべきだと思います。

新専門医制度では内科医が減る?
新専門医制度のために行きたかった診療科を諦めるという話はよく聞きます。特に顕著なのが内科からマイナー科に変えるというケースです。理由は簡単で、先述の通り初期研修で内科をたくさんローテーションしているのに専門領域を決められない上に専門研修でも内科各科をローテーションしないといけないためです(その他にもいろいろな理由を聞きます)。日本専門医機構の声明では前年よりもマイナー科の志望者が増えたという添付資料があったようですが、昨年も新専門医制度開始するべきか揺れ動いていたので、多くの人が内科からマイナー科に進路を変えたのでしょう。そのような現状を踏まえると内科医が今後減っていく可能性を最も危惧しています。

女医さんのキャリア形成がより難しくなるのではないか?
近年女医さんが非常に増えていますが、出産や育児を考える時期と専門研修の時期が被るため、キャリア形成が非常に難しくなっています。それに伴い医者夫婦も増えてきており、専門研修の3年間は同じ病院にいることのできない新専門医制度では、医者夫婦にとっては同居が難しいなど夫婦生活を難しくする可能性があります(自分自身が医者夫婦なので困るのは目に見えています)。

新専門医制度のレールに乗らない選択肢もあり?
医療業界は多くの人が敷かれたレールの上を進んでいく世界ですが、本当はやりたいことがあるにも関わらず、新専門医制度のために進路を諦めざるを得ない人がいることも事実です。将来この専門医制度がどのようなメリットを持つことになるのか(診療報酬が専門医の有り無しで変わってくるなど)は分かりませんが、新専門医制度に乗らない自由な生き方もいいかもしれません。

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