子どもの鼠径ヘルニアの治療

子どもの鼠径ヘルニアは基本的に手術が必要な病気です。今回は鼠径ヘルニアの治療について書いていきます。

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鼠径ヘルニアは自然に治るのか?

赤ちゃんがお腹の中にいるときに腹膜から腹膜鞘状突起という組織が鼠径部から陰嚢に向かって伸びていきます(この中を精巣が通っていきます)。生後半年までにこの腹膜鞘状突起は自然に閉じることが多いですが、自然に閉鎖しなかった場合に鼠径ヘルニアを発症することがあります。自然に閉じる可能性がある期間には手術は必要がないことが多いですが、自然閉鎖が期待できなくなる生後9ヶ月から1年を過ぎて鼠径ヘルニアがある場合には手術での治療が必要になります。手術の時期に関しては決まったものはなく、小児外科医の判断にゆだねられますが、大急ぎで手術をする必要はありません。

鼠径ヘルニアの手術が必要な理由は?

鼠径ヘルニアで手術が必要な理由は以下の3つがあります。
①嵌頓する可能性があること
②自然に治ることが期待できないこと
③見た目が良くないこと

鼠径ヘルニアの手術の方法は?

鼠径ヘルニアの手術方法は大きく分けて2種類あります。鼠径部切開法(従来法)と腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(LPEC法)です。いずれの手術も早ければ15分以内、長くても1時間以内で終了する手術ですが、子どもの場合には全身麻酔で手術を受ける必要があります。

〇鼠径部切開法(従来法)
鼠径部を1~2cm程度横向きに切開し、ヘルニア嚢の根元を縛る(高位結紮する)方法です。傷が1ヶ所で済むことと将来は毛に隠れる部分で目立たないことがメリットです。一方で反対側に鼠径ヘルニアが起こる(対側発現)リスクがあります。対側発現は7~10%と言われています。
〇腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(LPEC法)
正式には腹腔鏡下経皮的腹膜外閉鎖術(Laparoscopic Percutaneous extraperitoneal closure)と呼ばれる方法で略してLPEC(エルペック)法と呼んでいます。2000年に日本で初めて報告された術式で、腹腔鏡で手術をする場合にはほとんどがこのLPEC法で行われています。最近はアジア各国にも広がりつつあるようです。腹腔鏡を使って腹腔内を覗いて手術をするため、反対側にもヘルニアが見つかった際には同時に手術をすることが可能です。つまり、鼠径部切開法(従来法)では防ぐことのできない対側発現の予防が可能であることが一番のメリットです。

手術の合併症は?

手術中に発生する合併症としては、神経や精管、卵巣、卵管、腸管、膀胱、大網などの臓器損傷があります。これらの臓器損傷は腹腔内で操作をするLPEC法でよりリスクが高いと言われています。手術後に発生する合併症としては、いずれの手術においても創部感染(SSI)やヘルニアの再発、精巣萎縮などが挙げられます。いずれの合併症も1%に満たない程の発生率なので、ほとんどの場合で安全に手術を行うことが可能です。

〈参考〉
・鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015(日本ヘルニア学会ガイドライン委員会編)
・標準小児外科学第7版

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free-ped-surgeon

都内の病院に勤務している小児外科医。まだまだ修行中ですが、子どもたちの助けになるべく日々奮闘中。詳細はプロフィールをご覧ください。
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