医師国家試験解説 第1回 14歳男児 右陰嚢痛

医師国家試験解説

 今回の症例のように突然始まる陰嚢痛は「急性陰嚢症」と呼び、小児の救急外来では時々遭遇します。急性陰嚢症の中でも絶対見逃してはいけない疾患として精巣捻転症(精索捻転症)があります。その他にも精巣上体炎や精巣付属器捻転(精巣垂捻転、精巣上体垂捻転)、精索静脈瘤、陰嚢の外傷などがあり、稀な疾患としてIgA血管炎(Henoch-Schonlein紫斑病)や精巣腫瘍、精巣炎などがあります。これらはすべてエコーで鑑別が可能であり、確定診断にはエコーが必須です。

 この症例は午前0時に始まる右陰嚢痛で5時間後に救急外来を受診しています。来院時には嘔吐があり、触診で激痛があります。精巣エコー所見では、右精巣内に血流が見られず、右精巣は対側と比較しており精巣捻転症(精索捻転症)の典型的な所見です。したがって、すぐに緊急手術で捻転解除が必要ですので、正解は“b”となります。

 精巣捻転症(精索捻転症)は寒い冬の早朝に多く、(季節は書いていませんが)早朝に受診する点は典型的な症例と言えます。当直中の眠い目を擦りながらも決して帰宅させてはいけない疾患です。このような子どもに出会った場合にはすぐに小児外科(もしくは泌尿器科)にコンサルトをしてください。

 精巣捻転症(精索捻転症)では緊急手術で捻転解除し、精巣固定を行うのですが、多くの症例で精巣の温存は難しく、精巣の摘出を行うことになります。一般的に捻転から解除まで6時間以内であれば精巣の温存率が高いと言われていますが、精巣の温存が可能かどうかは捻転解除までの時間と捻転の角度によって決まります。精巣温存が難しい理由としては受診のタイミングが遅かったり、見逃されて手術時期を逃すなど様々です。時々、思春期男子は陰嚢痛を恥ずかしくて言いたがらず腹痛と言って受診することもあります(過去に何度か経験があります)。母親の前では隠す子がいるので、思春期男子の腹痛を見たらこっそりと陰嚢痛がないか聞いてみてください(もしくはパンツをおろしてしっかり診察してください)。精巣捻転症(精索捻転症)に関する記事も書いているので参考にしてください。

 解説は以上です。第1回は14歳男児の精巣捻転症(精索捻転症)の症例でした。国家試験や日々の診療に是非役立ててください。

小児外科医からのTake Home Message

・陰嚢痛を見たら精巣捻転症(精索捻転症)は絶対見逃してはならない!
・精巣捻転症が否定できなければ夜中でもすぐに小児外科or泌尿器科コンサルト!
・思春期男子の腹痛に騙されるな!

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