2016年2月にJAMAからSepsis-3が発表されてから1年以上が経ちました。少しずつ新しい敗血症の概念が根付いてきた頃でしょうか。Sepsis-3の発表に合わせて日本版敗血症診療ガイドラインが改訂され、新たにJ-SSCG 2016が発行されています。敗血症はどのような分野で働くにせよ必ず関わりますので、今日はJ-SSCG2016に基づいた成人患者での敗血症と敗血症性ショックの診断基準について説明します。
敗血症の定義が変わった!?
Sepsis-3の最大の変更点は敗血症の定義が変わったことです。1992年のSepsis-1、2003年のSepsis-2では、「SIRS+感染症=敗血症」というのが定義でした。そして、重症度に応じて敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックと分類していました。
2016年のSepsis-3では敗血症の定義がガラッと変わりました。「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態=敗血症」です。何が変わったかというと、「臓器障害」という概念が加わったことです。すなわち、今までと比べて敗血症の診断基準は厳しくなったということになります。そして、重症敗血症の概念はなくなり、敗血症と敗血症性ショックのみとなりました。
敗血症の診断
Singer, Mervyn, et al. “The third international consensus definitions for sepsis and septic shock (sepsis-3).” Jama 315.8 (2016): 801-810.から引用
それでは実際に敗血症の診断はどのようにされるのでしょうか?英語の原著論文からの引用ですが、上のアルゴリズム通り診断していけばよいのです。アルゴリズムに従って、まずはqSOFAの判定を行い、次に臓器障害としてSOFAの判定を行います(SOFAの判定は以下の表を参考にしてください)。新しい診断基準では、時間経過でqSOFAやSOFAの評価を行って治療効果判定ができるという点で非常に有用だと感じています。
Singer, Mervyn, et al. “The third international consensus definitions for sepsis and septic shock (sepsis-3).” Jama 315.8 (2016): 801-810.から引用
敗血症性ショックの診断
次に敗血症性ショックの診断です。大事なことは2点だけです。
・平均血圧≧65mmHgを維持するために血管作動薬が必要
・乳酸値≧2mmol/L(=18mg/dL)
敗血症の診断基準を満たす患者であれば、この2点を見るだけで敗血症性ショックの診断は可能です。なので、敗血症性ショックを疑う患者には必ず動脈血液ガスを測定しましょう。
以上が成人患者での敗血症と敗血症性ショックの診断方法です。敗血症の患者さんに遭遇することは少なくないと思います。すぐに使える知識なので、しっかりマスターしましょう!