小児外科の仕事とは?

コラム

小児外科とは?

小児外科はあまり馴染みのない診療科かもしれませんが、その名の通り小児に関わる外科系疾患を扱う診療科です。最近では、小児外科を題材としたドラマとして「グッド・ドクター」があります。

日常業務は手術を中心として検査や外来など多岐に渡ります。日本では中学校卒業までが小児と考えられているため、主に15歳以下の患者さんの手術や検査を担当します。成人であれば消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科など臓器ごとに専門の外科に分かれていますが、小児に関しては内臓を扱う手術の多くは小児外科の領域となります。ただし例外もあり、小児の心臓血管外科(先天性心奇形など)と脳神経外科(脳腫瘍など)、整形外科(骨折など)に関しては専門性が高いために各科で行われています。すなわち、これらの3つの診療科を除いた小児の消化器や呼吸器、泌尿器、婦人科系などはすべて小児外科で扱う領域です。そのため、幅広い知識が要求される上に様々な領域の技術が必要となります(小児外科医の魅力の1つでもあります)

小児外科医になるまでの道のりは?

現在の制度では、医学部を卒業後に2年間の初期臨床研修医(いわゆる研修医)を経て、各々が進む診療科を決定します。小児外科は大きく外科のくくりの中にあり、2年間の初期臨床研修終了後に外科専門医の取得を目指して成人の消化器外科や呼吸器外科、心臓血管外科など多くの手術を経験します。3~4年間で外科専門医が取得可能であり、その後に数年間の小児外科医の経験を経て、小児外科専門医を取得することが可能です。まずは成人の消化器外科などを経験した上で小児外科医になることが多く、小児外科医としてのスタートは早い人で医師3年目、遅い人で10年目頃になります。

小児外科医は足りているのか?

現在、日本全体で約30万人の医師がいますが、うち日本小児外科学会の会員数は約2500人です。そのうち、800人程度が小児外科専門医を取得していますが、近年成り手が少しずつ減ってきていると言われています。

また、小児外科医の偏在も問題になっており、特に北海道や東北では小児外科医が少ない状況です。このような地域では、成人の外科の先生が小児外科の手術も行っている状態のため、将来的には日本全体で小児外科医が小児の手術を行えるような状況となることが望まれます。

小児外科で扱う疾患は?

小児外科では、手術に関わる全身の多岐の疾患を担当します。以下に小児外科で扱う主な疾患を箇条書きにしました。急性虫垂炎や精巣捻転などの緊急手術が必要な疾患も多く含まれます。

〈顔面〉
・耳前瘻孔
・舌小帯短縮症

〈頸部〉
・正中頸嚢胞
・側頸嚢胞

〈呼吸器〉
・嚢胞性肺疾患
・肺分画症
・先天性気管狭窄症
・先天性横隔膜ヘルニア
・気管軟化症
・漏斗胸
・気管異物
・気胸

〈消化器〉
・先天性食道閉鎖症
・胃軸捻転
・胃食道逆流症
・肥厚性幽門狭窄症
・先天性十二指腸閉鎖症
・中腸軸捻転
・壊死性腸炎
・急性虫垂炎
・ヒルシュスプルング病
・鎖肛
・消化管異物
・鼠径ヘルニア
・臍ヘルニア
・臍帯ヘルニア
・腹壁破裂
・便秘症

〈肝胆膵〉
・胆道閉鎖症
・先天性胆道拡張症
・膵胆管合流異常症
・肝芽腫

〈泌尿器〉
・膀胱尿管逆流症
・水腎症
・停留精巣
・陰嚢水腫
・精巣上体炎
・精巣捻転

〈婦人科系〉
・卵巣嚢腫
・卵巣腫瘍

最後に

このブログでは、主に小児外科で扱う疾患についての解説を少しずつ充実させていく予定です。気になるものがあれば是非チェックしてください。

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