精索(精巣)捻転症 ~精巣温存のために発症すぐの受診を!~

泌尿器

小児外科の中でも特に緊急性の高い精索捻転症について解説します。一般的に精巣捻転症と呼ばれていますが、実際には精索が捻転していることがほとんどですので、ここでは精索捻転症と呼びます。いかに早く受診できるかが精巣を温存できるかどうかの分かれ道ですので、小児科医、小児外科医、泌尿器科医はもちろんのこと、看護師などの医療従事者、一般の方々にも正しい知識を持っておいてほしい病気の1つです。

精索捻転症とは?

精索捻転症は、その名の通り精索がねじれてしまう病気で、突然始まる激しい陰嚢痛で発症します。左側に発症することが多く、夏よりも冬に、昼間よりも夜間早朝に発症しやすいことが特徴です。

好発年齢

精索捻転症の好発年齢は決まっており、思春期(12~18歳頃)が7~8割新生児期(生後1ヶ月まで)が残りの2~3割です。思春期に発生しやすい理由は、成長期で精巣のサイズが大きくなる時期で捻転しやすくなるため、新生児期に発生しやすい理由は、生後すぐで精巣や精索と周囲の組織との固定が甘く捻転しやすいためです。それ以外の年齢で発生することもまれにありますが、精巣腫瘍や停留精巣などの原因があることが多いです。

症状

思春期であれば突然の陰嚢痛、新生児期であれば陰嚢腫大陰嚢発赤などが症状として現れます。思春期の場合には、激烈な痛みを感じるため陰嚢痛に伴う腹痛や嘔吐などの症状が現れることもあります。

突然始まる陰嚢痛で、我慢できないほどの激痛です

分類と原因

やや専門的な内容になりますが、精索捻転症は大きく2つに分類されます。解剖学的に精巣は精巣鞘膜に包まれており、精巣鞘膜内で捻転する鞘膜内捻転と精巣鞘膜外で捻転する鞘膜外捻転があります。

思春期に発生する場合には、精巣が成長する時期に発生するため鞘膜内捻転がほとんどです。この場合には、Bell clapper deformityと呼ばれる先天性の精巣と精巣鞘膜の付着異常が約8割に見られ、反対側の精索捻転症も起こしやすいと言われています。一方で、新生児期に発生する場合は精巣鞘膜と周囲の組織の癒着が甘いことに起因する鞘膜内捻転がほとんどです。

診断方法

精索捻転症では、精巣挙筋反射は消失し、精巣の位置がやや高位で横を向いていることが多いです。ただ、診察のみでは精索捻転症を確実に否定することはなかなか難しいうえに、発症初期であればこれらの症状が出ないこともあるので見逃しやすいです。したがって確定診断はエコーで行います。エコーで確認するポイントは以下の通りです。

・精巣内の血流(一番大事!)

・精索の捻転の有無

・精巣サイズと内部エコー

・陰嚢、精索水瘤の有無

・精巣上体の血流、腫大の有無

精索捻転の場合には精巣上体と精巣内の血流は途絶しており、精巣サイズは大きくなっており内部エコーは不均一となります。また反応性に陰嚢や精索に水瘤を認めます。性能の良いエコーを使っていれば、捻転部位が確認できることもあります。

治療

エコーで精索捻転症の確定診断がついた場合や精索捻転症が否定できない場合には手術が必須です。手術では、陰嚢の試験切開を行い、精巣や精索の捻転の有無を確認します。捻転が確認できた場合には、捻転の解除を行います。捻転の解除後に精巣の血流を確認し、血流が改善する場合には精巣を温存して精巣固定術を行います。もし精巣が完全に壊死していると判断された場合には、精巣の摘出を行います。精巣を温存できた場合、摘出した場合に関わらず、対側固定を行うことが多いです。具体的な手術の方法については手術を受ける施設で差があるので、ここでは割愛します。

※徒手整復について

捻転した精巣を引っ張って外旋させると急に痛みが良くなることがあります。ただ、徒手整復で症状が一時的に良くなっても再び捻転する可能性が高いので手術をおすすめします。手術までの症状緩和のためにチャレンジする価値はあります。

手術による合併症としては、出血や創部感染などが挙げられますが、めったにありません。ただ、精索捻転症に伴う長期的な精巣の萎縮や不妊症については注意しておかなければなりません。

精巣温存の可能性について

精巣が温存できるか否かは発症から捻転解除までの時間と捻転の程度によります。6時間以内に捻転解除できれば約9割の精巣が温存可能です。ただ、実際は受診までに時間がかかってしまうために精巣の温存が難しいケースの方が多いです。一方で、新生児期の精索捻転症については、7割程度が胎児期の捻転に伴うものである上に精巣腫瘍との鑑別が難しいことも多く、精巣を温存できることはほとんどありません。

将来の不妊症の可能性について

精索捻転症に限らず、精巣の手術を受けた子どもや家族から必ずといっていいほど質問を受けます。

将来不妊症になってしまう確率はどれくらいでしょうか?

これについて確定的な答えはありません。最終的に子どもができるかどうかを判断するためには手術を行ってから数十年間にわたって患者さんを追跡する必要があり、現実的にほぼ不可能だからです。ただ、精巣を温存できたとしても摘出したとしても多少影響が出てしまう可能性はあります。将来、もし不妊症で泌尿器科を受診する際には精索捻転症で手術を受けたことがありますと必ず伝えましょう。

最後に

精索捻転症で精巣を温存できるか否かはいかに早く病院を受診できるかにかかっています。小児科医や小児外科医、泌尿器科医の診断の技術はもちろんですが、患者自身がいかに早く病院を受診するかどうかが最も大切です。特に思春期の男の子は恥ずかしがって陰嚢痛であることを隠してしまう場合も多いです。もし受診を迷ってこのブログを読んでいる人がいれば、すぐに受診することをおすすめします。

恥ずかしがらずにすぐに受診しましょう!

参考文献

・急性陰嚢症診療ガイドライン2014年度版

・標準小児外科学第7版

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