Alvarado scoreは1986年に外科医のAlfred Alvaradoが初めて提唱した急性虫垂炎のスコアリングシステムで、現在も世界中で広く使われています。CTやエコーなどの画像検査が発達した現在では急性虫垂炎の診断は比較的容易になりました(ただ、いまだに見逃しが多い疾患です)。しかしながら、かつては腹部所見と血液検査などの情報をもとに急性虫垂炎の診断を付けていたため、“negative appendectomy”と呼ばれる手術をしたにも関わらず急性虫垂炎の診断ではなかった例が数多くありました(実際に1986年の原著論文でも11%がnegative appendectomyでした)。そこでAlvaradoは”negative appendectomy”を少しでも減らすべく診断に有用なスコアリングシステム作りを目指しました。
1986年に発表された原著論文では、1975年1月から1976年12月に急性虫垂炎を疑った腹痛で入院していた305人の患者が対象です。305人のうち227人が急性虫垂炎の確定診断となり、年齢は4~80歳(平均が25.3歳)でした。retrospectiveに症状や血液検査結果などの解析を行うことでAlvarado scoreは完成しました。
Alvarado score(MANTRELS score)とは?
Alvarado scoreは症状や血液検査所見の8項目からなり合計が10点です。それぞれの頭文字を取ってMANTRELS scoreとも呼ばれます。
Migration to the right lower quadrant(右下腹部への痛みの移動):1点
Anorexia(食思不振):1点
Nausea and vomiting(悪心・嘔吐):1点
Tenderness in the right lower quadrant(右下腹部痛):2点
Rebound pain(反跳痛):1点
Elevation of tempreture>37.3℃(37.3℃以上の発熱):1点
Leukocytosis(10000/μL以上の白血球数上昇):2点
Shift to the left(好中球分画70%以上の左方移動):1点
何点以上で急性虫垂炎の可能性が高いのか?
2011年のOhleらのsystematic reviewによればAlvarado score 5点未満で入院が必要な急性虫垂炎はほぼ除外できるようです(感度99%)。一方で7点以上の場合には急性虫垂炎の確定診断や外科的治療に進むことが推奨されます。
小児の場合にはAlvarado score以外にPediatric appendicitis score (PAS)でも同様に評価を行うことが可能です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
CT撮影が必要かどうかの判断は?
2007年のMcKayらの論文ではAlvarado score 3点以下の患者で腹部CTを撮影したところ、感度96.2%、特異度67.3%で急性虫垂炎が除外できました。一方で7点以上の場合には感度77%、特異度100%で急性虫垂炎の診断となりました。また腹部CTの感度と特異度はそれぞれ90.4%、95%でした。
まとめ
これらをまとめれば、Alvarado score 7点以上であれば急性虫垂炎の可能性が非常に高くエコーや腹部CTでの精査は必須だと考えられます。一方で3点未満の場合には急性虫垂炎の可能性はかなり低いため自宅で経過観察が可能でしょう。4~6点では状況により判断という形になるかと思います。
参考文献
・Alvarado, Alfredo. “A practical score for the early diagnosis of acute appendicitis.” Annals of emergency medicine 15.5 (1986): 557-564.
・Ohle, Robert, et al. “The Alvarado score for predicting acute appendicitis: a systematic review.” BMC medicine 9 (2011): 139.
・McKay, Robert, and Jessica Shepherd. “The use of the clinical scoring system by Alvarado in the decision to perform computed tomography for acute appendicitis in the ED.” The American journal of emergency medicine 25.5 (2007): 489-493.